お猪口を手にしたまんま三津はボロボロ
お猪口を手にしたまんま三津はボロボロ泣き始めた。
『今日は泣き上戸……。』
完全に酔ったなと確信した。でも丁度いい。三津の本音が聞けるかもしれない。
「私にも三津しかいないよ。」
ちゃんと三津はこっちを向いてて自分しか目に映してないと分かり顔がにやける。
「嘘ばっかり!幾松さんだっておるし匂いつけた文送ってくる人おるし!私以外と一緒におる癖にぃっ!!」
『質の悪い酔っ払い……。』
甘い展開を期待した自分が馬鹿だったと思った。
わんわん泣き出した三津をどう宥めるべきか目元を引き攣らせながら考えた。
だがこれが三津の本音かと思うと胸がチクチク痛む。昨日の喧嘩もこれで終わりにと言っていたけど,やはり自分の本音を押し殺して終わらせただけ。
納得できないまま押し込んでしまっただけ。
『我慢ばかりさせてしまってる……。https://www.easycorp.com.hk/zh/trademark
無理もない,三津は彼しか知らないんだ。』
三津が男として知ってるのは新平だけ。
だからふと思った。
『三津はずっと私と彼を比べていたのでは……。』
三津が伝えてくれる“好きだ愛してる”の言葉は疑わない。だがその言葉の裏には常に新平が居るのでは。
「……彼は私とは正反対だったんだね?」
思わず口にしてしまった。
酔ってるなら本音を吐く。酔ってるなら明日には忘れている。
そう思って聞いてしまった。
「違う。全然違う。全部違う。」
あぁ……やっぱり三津は常にどこかに彼の影を追っているんだ。
彼をどこかに探してるんだ。比べてるんだ。
打ちのめされた。やっぱり新平の方が上だと言われてる気がした。
「だって小五郎さんは新ちゃんやないし新ちゃんも小五郎さんやないもん。」
言葉が出なかった。
自分の浅はかさに嫌気がさした。
「私はこのままの私でいいのかな?」
答えを聞くのが怖いと思った。とめどなく不満を吐き捨てられそうだ。
落ち着かなくて徳利に残っていた全ての酒を飲み干した。
聞くんじゃなかったと返答を聞く前から後悔した。
俯いたまま涙を拭っていた三津は声を出さず,何度も首を縦に振って答えた。
そのままでいいと。
「どんな小五郎さんでも好きです……。大好き全部好きっ……!」
ボロボロ涙を流す酔っ払いはうわ言のように好きなんですを繰り返す。
『やっぱり私を掻き乱してくるっ……!』
堪らず三津を抱き寄せた。
「私もどんな三津でも大好きだ。」
すると三津が拳を握り締めて胸を叩き出した。
「嘘つきぃ!サヤさん見習えって言った癖にぃっ!ホンマはお淑やかで大人の女の人がいいんでしょ?綺麗な人がいいんでしょ?」
『そこも根に持ってたんだね……。』
何度も胸に拳を打ち付けられながら,本気で言ったんじゃないすまなかったと謝った。
「許しません!この女好きぃ!」
「だから突然言葉の刃で刺してくるのやめて?」
酔っ払いの戯言とは言え三津の口から発せられてるんだ。結構傷付く。「どうすれば許していただけますか?姫。」
涙で濡れた頬に自分の頬をすり寄せて耳元で囁いた。
こうなれば彼女の下僕と化すしかない。許してくれるなら何でもするよと言ってみる。
「絶対許しませんっ!」
『なんと……。私は一度でも間違った事をすれば一生根に持たれるのか……。』
じゃあ彼とはどうだったのか。
喧嘩はしなかったのか?どうやって三津の機嫌を取ってきたのだ?
「三……三津,彼とは喧嘩しなかったかい?」
「しましたよ……。」
「じゃあ彼の事はどうやって許したの?」
そこが一番重要だ。一体どうやって仲直りしたのだ。もう彼のやり方に頼るしか術がない。
「甘やかしてもらって……。」
「それはどんな?」
「新ちゃんはごめんって言っていっぱいぎゅうしてくれました……。」
なんだ簡単じゃないか。それならお安い御用だ。
「あんな事を言ってすまなかった。本気で言ったんじゃないんだ。私が悪かったよ。」
さぁ甘えてくれ。存分に好きなだけ。
すると腕の中の三津がもぞもぞ動いて真っ赤になった目でじっとり桂を見上げた。
それから桂の顔を両手で挟むと徐に口付けをした。
「ん!?」
唇を押し当てられ三津の体重がのしかかり,桂は体勢を崩した。
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